事例研究

【導入事例】部品識別から欠陥検出まで:産業用自動化部品の製造メーカーが構築したPCBラベリングワークフロー

Superb AI Japan

2026/08/26 | 6 min read

PCB部品・欠陥のラベリング|OSSの限界を超えるデータセット構築

部品識別から欠陥検出まで」:産業用自動化部品の製造メーカーのPCBラベリングワークフロー

部品識別と欠陥検出を同一のデータセット上で扱うラベリング構造を再構成したイメージ

部品識別と欠陥検出を同一のデータセット上で扱うラベリング構造を再構成したイメージ

この記事の要点

  • オープンソースのラベリングツールは初期検証には十分でも、実際の製品データの段階では、プロジェクト管理・ラベル品質のレビュー・データセット探索という運用面に限界が生じます。
  • 本事例では、バウンディングボックス/ポリゴン/回転バウンディングボックスを1つのプロジェクト内で併用し、部品識別と欠陥検出を同一のデータセットで扱えるようにしました。
  • AIによる誤ラベル検出とプロジェクト単位の進捗管理により、管理者とラベラーを兼ねる少人数チームでも、データセット全体の品質を点検できる体制が整いました。

多くのチームは、オープンソースのラベリングツールから着手します。初期費用がかからず、小規模な実験であれば十分に機能するためです。しかし、扱うデータが実際の製品データに移り、アノテーション要件が多様になるにつれて、ラベリング機能だけでは解決できない領域——プロジェクト管理、ラベル品質のレビュー、そしてデータセットの探索——に隙間が生まれ始めます。

ある産業用自動化部品の製造メーカーの研究チームも、同じ課題に直面していました。同社はPCB(プリント基板)上の部品種別の識別と欠陥検出を行うAIの開発にあたり、データセット構築の基盤となるラベリングツールの比較検討を開始します。複数のツールを比較した結果、Superb Platform(スーパーブ プラットフォーム)を採用し、実際の製品データを対象としたラベリングワークフローを構築しました。

1枚のPCBに、複数のラベリング要件が発生する

同社が扱うデータは、PCB基板の画像です。タスクは2つに分かれます。基板上に実装された部品の種別を識別すること、そして部品と基板そのものの欠陥を検出することです。この2つを同一のデータセット上で行うため、ラベリングの難易度は単純な足し算を超えて上がっていきました。

タスクごとにアノテーション形式が異なる

部品識別と欠陥検出では、必要となるアノテーション形式が異なります。バウンディングボックスで十分に表現できる対象がある一方で、形状が不規則でポリゴンセグメンテーションを要する対象もあります。特に斜めに実装された部品は、通常のバウンディングボックスでは背景が過剰に含まれてしまい、正確に捉えることが困難です。こうしたケースでは、対象の角度を反映できる回転バウンディングボックス(Rotated Bounding Box)が必要になります。これらのアノテーション要件をオープンソースツール上で行き来すること自体が、日常的な運用負荷になっていました。

ラベリング機能はあっても、それを支える運用の仕組みがなかった

同社のラベリングは、外部ベンダーへの委託ではなく、社内の研究チームが直接担当していました。データに製品情報が含まれるため、社外に持ち出すことが難しかったからです。同じメンバーが管理者とラベラーを兼ねる少人数体制では、作業の割り当て、進捗の把握、レビュー履歴の管理といった運用タスクが、そのままラベリング工程のボトルネックになります。既存のオープンソースツールは、この運用レイヤーに対応していませんでした。

ラベル品質を検証する現実的な手段がなかった

ラベリングの誤りは、学習が始まる前の段階でモデル性能の上限を決めてしまいます。しかし、誤ったラベルを見つけるには、結局は人がデータを見直すしかありません。少人数の社内チームにとって、データセット全体を目視で再確認することは現実的な選択肢ではなく、品質管理は担当者個人の注意深さに大きく依存していました。

ラベリングからレビューまでを、1つのワークフローに

Superb Platformは、データ収集・ラベリングからモデルの学習・評価まで、AIモデル開発の全工程を自動化するVision Intelligence(ビジョンインテリジェンス)プラットフォームです。同社はラベリングツールを比較する過程で、1つの明確な優先順位を見出しました。ユーザビリティ(使いやすさ)です。決め手となったのは機能一覧の長さではなく、少人数のチームがラベリングと運用の両方を毎日どれだけ滑らかに回せるか、という点でした。

[図2]再構成したワークフロー:マルチフォーマットのアノテーション、AIによるレビュー、データセット管理

[図2]再構成したワークフロー:マルチフォーマットのアノテーション、AIによるレビュー、データセット管理

1. 単一プロジェクト内でのマルチフォーマットアノテーション

チームは、バウンディングボックス、ポリゴン、回転バウンディングボックスを1つのプロジェクト内で併用しました。部品識別と欠陥検出のクラス体系を一箇所で定義し、対象の形状や特性に応じて適切なアノテーション形式を選択します。既存ツールで作成済みのアノテーション結果は標準フォーマットで移行したため、作業の連続性を損なうことなく、続きから進めることができました。

2. 誤ラベル検出によるレビューの自動化

Superb PlatformのAuto-Curate(オートキュレート)を用いることで、誤りの可能性が高いラベルを自動的に洗い出しました。データセット全体を再び手作業で見直すのではなく、AIが検出した「疑わしいラベル」からレビューを始められます。さらにモデル診断機能により、モデルの推論結果をオブジェクト単位で確認し、性能が安定しないクラスやデータを絞り込めるようになりました。

3. データセットの探索と管理

Slice(スライス)機能では、特定の条件を満たすデータの部分集合を作成し、管理しました。類似データ検索を使えば、特定のケースに似た画像を集めて、データセット全体の構成を確認することもできます。ラベリングの進捗と作業履歴はプロジェクト単位で集約されるため、管理者を兼ねるメンバーが別途トラッキング用の管理表を維持しなくても、プロジェクトの状況を把握できるようになりました。

少人数のチームが、多品種の製品データを扱える構造へ

この事例における最大の変化は、ラベリング速度そのものではありませんでした。運用の構造です。

[図3]コンセプト図:分断されたラベリング・管理・レビューから、つながったワークフローへ

[図3]コンセプト図:分断されたラベリング・管理・レビューから、つながったワークフローへ

  • ツールを切り替えるコストがなくなりました。ラベリング、レビュー、データ管理が1つのワークフロー上でつながり、アノテーション形式ごとに作業を分けたり、別途管理文書を維持したりする必要がなくなりました。
  • ラベル品質が、人の目だけに依存しなくなりました。まずAIが誤ラベルの可能性を指摘するため、少人数のチームでもデータセット全体の品質を点検できる構造になりました。
  • セキュリティ要件と内製化の方針を両立できました。データを社内に置いたまま、自社の人員でデータセット構築を続けながら、不足していた運用レイヤーをプラットフォームで補うことができました。

導入前後の比較(要約)

データセット構築こそが、製造業AI成功の最初の関門

部品の種類が多く、欠陥のパターンも多様なPCB検査のような領域では、ラベリングツールの選択が、データセットの品質と構築スピードの双方を直接左右します。本事例は、オープンソースツールから着手した製造業の研究チームがどこで限界に突き当たるのか、そして、ラベリング・レビュー・データ管理を統合したワークフローが、実際の製品データの段階でそのボトルネックをどう解消しうるのかを示しています。

Superb AIは、1億3,000万件を超える産業用ビジュアルデータ資産を基盤に、データセット構築からモデル開発・運用まで、製造業AIの全工程を支援します。

よくある質問(FAQ)

Q1. 既存のラベリングツールで作成したデータを移行できますか?

移行できます。既存ツールから書き出したアノテーションは、JSONなどの標準フォーマットでアップロードし、そのまま作業を継続できます。本事例でも、既存のオープンソースツールからアノテーション結果を移行するところから着手しています。

Q2. Superb Platformは、回転バウンディングボックスのような特殊なアノテーション形式に対応していますか?

対応しています。バウンディングボックス、ポリゴン、回転バウンディングボックスなど複数のアノテーション形式を、1つのプロジェクト内で併用できます。これにより、部品識別と欠陥検出のように性質の異なるタスクを、同一のデータセット上で扱うことが可能です。

Q3. 少人数のラベリングチームでも、このワークフローを運用できますか?

運用できます。誤ラベルの自動検出とオブジェクト単位のレビュー機能が品質管理の負担を軽減し、プロジェクト単位の進捗・履歴管理が、別途の運用管理表を代替します。本事例も、管理とラベリングを兼務する少人数の社内チームによって実施されました。

Q4. 厳しいセキュリティ要件があるデータでも利用できますか?

利用できます。データは、プロジェクトで合意した範囲内でのみ利用されます。お客様のセキュリティ要件に応じて、オンプレミス導入を含むクローズド環境での運用にも対応しています。

PCB検査をはじめとする外観検査AIのデータセット構築については、Superb AIまでお問い合わせください。


Superb AIについて

Superb AIは、エンタープライズ向けのAIトレーニングデータプラットフォームであり、ML(機械学習)チームが組織内でトレーニングデータをより効果的に管理・提供できるよう、データ管理の新しいアプローチを提案しています。2018年に発表されたSuperb AI Suiteは、自動化、コラボレーション、プラグアンドプレイモジュールのユニークな組み合わせを提供し、多くのチームが高品質なトレーニングデータセットを準備する時間を大幅に短縮する手助けをしています。この変革を体験したい方は、今すぐ無料でご登録ください。