事例研究
【導入事例】5年続く認識AIの高度化:自律走行ロボットサービス企業R社が構築したマルチセンサーデータのラベリングパイプライン

Superb AI Japan
2026/09/03 | 7 min read


[図1]LiDAR点群と多眼カメラ映像を同時にラベリングするマルチセンサー認識データの構築(イラスト再構成)
ロボットが建物から外の世界に出はじめています。
物流センターの中で決められた経路を往復していたロボットが、いまは都市の歩道や横断歩道を渡り、人にサービスを届けています。MarketsandMarketsによると、世界の自律移動ロボット(AMR)市場は2026年の27億5,000万ドルから2032年には70億7,000万ドル規模へ、年平均14.4%で成長する見通しです。
ところが、ロボットが出ていった屋外は、屋内とは比べものにならないほど複雑です。歩道と車道、横断歩道と信号機、そして動きを予測しにくい歩行者まで。屋外の自律走行ロボットの認識AI(Perception AI)は、これらすべてをLiDARとカメラで読み取らなければならず、その性能は結局、学習データの品質と物量で決まります。
問題は、このデータの構築難度です。3D点群と多眼カメラの映像を、時間軸まで合わせてラベリングする必要があるからです。自律走行ロボットサービスを運営するR社は、このデータパイプラインをSuperb AIとともに作り上げてきました。2022年の初回プロジェクトを起点に5年連続で契約を継続し、今年も新規案件のキックオフを終えて構築を進めています。
この記事の要点
- 屋外を走るロボットの認識AI向けデータは、LiDAR点群(PCD)上の物体と多眼カメラ映像の同一物体を、キャリブレーション情報で位置合わせし、さらに連続フレームで追跡する必要があります。
- R社の要求仕様は3Dキューボイド、時系列データ、信号機認識、走行可能空間の細分化へと毎年拡張されてきましたが、パイプラインを作り直すことなく吸収できる運用体制が確立されました。
- 都市部で撮影した走行データを扱うため、個人情報の委受託体制とセキュリティ統制が前提条件となり、Superb AIはR社の年次セキュリティ点検を毎年通過しています。
ロボットが走る道は、車道より複雑だ
自動運転車のデータ構築の方法論は、すでに業界標準が確立しています。しかし、歩道の上を走るロボットは、車両とは異なる難度の問題に直面します。
マルチセンサー融合データの複雑さ
R社のロボットは、LiDARと前後左右をカバーする多眼カメラで周囲を認識します。学習データを作るには、3D点群(PCD)上の物体と各カメラ映像内の同一物体を、キャリブレーション情報にもとづいて位置合わせしなければなりません。さらに、単一フレームではなく連続フレーム(時系列データ)の中で同じ物体を追跡しながらラベリングする必要があります。座標系も視点も異なるデータを1つの正解データにまとめる作業そのものが、難度の高いエンジニアリングです。
毎年進化するデータ仕様
認識AIが高度化するほど、必要なデータも変わります。R社の要求仕様は、3Dキューボイドと時系列データ、信号機の認識、走行可能空間の細分化へと、毎年拡張されてきました。仕様が変わるたびにラベリングガイド、成果物フォーマット、レビュー基準を新たに定める負担が、プロジェクトごとに繰り返されます。
都市部で撮影したデータの個人情報対応
都市部で収集した走行データには、歩行者や車両がそのまま映り込みます。このデータを外部パートナーと扱うには、個人情報の委受託体制とセキュリティ統制を備える必要があり、パートナーがその基準を守っているかを毎年検証しなければなりません。データパートナーのセキュリティ体制が、プロジェクト遂行の前提条件となる。
収集から成果物まで1つのプラットフォーム上で、5年を支えたパイプライン
R社とSuperb AIの協業は、ラベリングの代行ではなく、認識データのパイプライン全体をともに運用する形で進んでいます。
Superb Platform(スーパーブ プラットフォーム)は、データ収集からラベリング、レビュー、成果物管理まで、AI学習データ構築の全工程を1つのパイプラインとして運用するVision Intelligence(ビジョンインテリジェンス)プラットフォームです。R社案件の3D・2Dラベリングと、バッチ単位の成果物管理も、このプラットフォーム上で進められています。

[図2]収集・クレンジング・ラベリング・成果物へとつながる認識データパイプライン(再構成)
1. 3D LiDARキューボイドと時系列データのラベリング
LiDAR点群の上で物体を3Dキューボイドとしてラベリングし、多眼カメラの映像と位置合わせしてレビューします。単一フレームの作業に加えて、連続フレームで同一物体を追跡する時系列(Temporal)データまで構築し、動く歩行者や車両の軌跡を学習できるデータを作ります。
2. 都市の歩行環境に特化した2Dラベリング
走行可能空間を区分するマスクのセグメンテーション、信号機認識のための2Dバウンディングボックスなど、都市環境の認識に必要な2Dデータを並行して構築します。魚眼レンズカメラの映像のように歪み特性のあるデータも、ラベリングの対象範囲に含まれます。
3. 顧客フォーマットに合わせたカスタム成果物パイプライン
R社は、自社で定義したラベルフォーマットで成果物を受け取ります。Superb AIはPCDのアップロードからカスタムexportまで専用スクリプトを開発して運用し、仕様の追加や変更の要望が来ればパイプラインに反映してきました。バッチ単位でデータを受け取り、ラベリングして成果物を納品する運用のリズムが、5年間維持されています。
4. 収集協力会社の管理と個人情報セキュリティ体制
現場での収集が必要な案件では、収集協力会社との再委託の構造までSuperb AIが管理・監督します。個人情報取扱いの受託事業者としてR社の年次セキュリティ点検を毎年通過してきており、個人情報保護教育の受講、アクセス統制、保存期限にもとづく廃棄ポリシーまで、委受託基準に沿って運用しています。
契約書が語る成果、5年連続のパートナーシップ
この協業の成果を最もよく示す指標は、契約の継続です。R社は2022年以降、毎年データ構築案件をSuperb AIと進めてきており、今年も新規案件の契約を締結してキックオフを終えました。

[図3]5年にわたって積み上がった認識データ構築の範囲(再構成)
- データの範囲が毎年広がりました。協業範囲は、3Dキューボイドの単一フレームと時系列データから、信号機・走行可能空間の認識、高精度地図(HDマップ)向けデータまで広がってきました。認識AIの高度化の段階ごとに必要となるデータを、同じパイプライン上で引き継いできた結果です。
- 仕様変更がリスクではなくなりました。フォーマットガイドの協議、カスタムスクリプトへの反映、サンプル検証という対応手順が繰り返し検証されたことで、新しい要求仕様が出てもパイプラインを再構築せずに吸収できる運用体制が確立しました。
- セキュリティ検証を通過したパートナーシップです。個人情報取扱いの受託事業者としてのセキュリティ点検を毎年通過し、都市部で撮影したデータを扱う委受託体制の信頼性を維持しています。
5年間の協業で広がったデータ構築の範囲(要約)

自律走行ロボットの認識AIでは、データパートナーが重要になる
屋外の自律走行ロボットの認識AIは、一度のデータ構築で完成するものではありません。サービス提供地域が広がり、シナリオが増えるたびに新しいデータが必要になります。そのたびにパイプラインを一から立て直していては、高度化のスピードがデータに足を引っ張られてしまいます。
R社の事例は、マルチセンサーのラベリング能力、カスタムフォーマットへの対応力、そして個人情報のセキュリティ体制を備えたデータパートナーとの長期的な協業が、認識AI高度化のインフラになることを示しています。
Superb AIは、ロボティクス・自律走行企業のデータ戦略の立案から構築・運用まで、全工程をご一緒します。
よくある質問(FAQ)
Q1. LiDARとカメラのデータを1つのプラットフォームで一緒にラベリングできますか?
できます。3D点群上のキューボイドのラベリング、カメラ映像との位置合わせ、連続フレームの追跡までSuperb Platformで対応しています。本事例でも、LiDARと多眼カメラのデータを1つのパイプラインで構築しています。
Q2. 自社で定義したラベルフォーマットで成果物を受け取れますか?
はい。お客様が定義したJSONなどのカスタムフォーマットに合わせて、exportパイプラインを構成します。本事例では、PCDのアップロードからカスタム成果物への変換まで専用スクリプトで運用し、仕様変更の要望もパイプラインに反映してきました。
Q3. 都市部で撮影したデータの個人情報はどのように扱われますか?
個人情報の委受託契約にもとづき、アクセス統制、取扱者への教育、保存期限による廃棄までを管理し、お客様の年次セキュリティ点検を通じて毎年検証を受けています。収集協力会社が参加する場合は、再委託の管理・監督体制もあわせて運用します。
Q4. データ収集から任せることも、ラベリングだけを任せることもできますか?
どちらも可能です。現場での収集が必要な案件では、検証済みの収集協力会社とともに収集・クレンジング・ラベリングを統合して運用します。すでに保有しているデータがある場合は、ラベリングと成果物構築から始めることもできます。
自律走行ロボットや自動運転向けのマルチセンサーデータ構築については、Superb AIまでお問い合わせください。

Superb AIについて
Superb AIは、エンタープライズ向けのAIトレーニングデータプラットフォームであり、ML(機械学習)チームが組織内でトレーニングデータをより効果的に管理・提供できるよう、データ管理の新しいアプローチを提案しています。2018年に発表されたSuperb AI Suiteは、自動化、コラボレーション、プラグアンドプレイモジュールのユニークな組み合わせを提供し、多くのチームが高品質なトレーニングデータセットを準備する時間を大幅に短縮する手助けをしています。この変革を体験したい方は、今すぐ無料でご登録ください。


